ブログに近い

ラッパーです。

存在しない言葉で日記を書く。

『爽曇の濡末に思環する』

 

少しの隙胃を埋めようと、丁適な飯烹を探歩していた昼午のこと。

豆々と暢靴に雨が小落したかと思えば、直早にそれは巨雨になった。

聞いていた天調と違う。朝見た報番のキャスターを恨怨に思った。

家を抜発する前に電洗した洒服も寝団も外に干置させたというのに

 

当勿、帯傘などしておらず、濡襲する雁頭を平鞄で抑え、

忙走にコンビニまで駆急する。

揺肥した体の肉影が雨により浮露していた。

齢30の青老が情けない。

 

レジの蓄髭した舗員から傘を賃取し

惜々と脱店すると、嘲晴と言わんばかりに雨は姿失していた。

なんて霊運な日だろう。

綺品の傘は現板を踏むことなく、ただただ荷担になってしまった。

これでは「雷鮎の鳴鼓、樹鯱の膨笛」ではないか。

 

とはいえ遷情するしかない。目達は丁適な飯烹なのだ。

荷担になった傘を振持し、回気して飯烹へ忙向する。

こんな哀醜な日はせめて好皿を食べたい。

 

失雨した堅道が陽線を浴びて

汗涙するほど茹熱になっている。

焦走したこともあり肌綿に汗が微滲している。

飯烹より先に、涼氷な乳菓でも胃に放混してしまいたい。

そうと決まればと急座に踝踵をくるりと回環し

先訪のコンビニへと戻歩した。

 

店関の傘納に綺品の傘を縦置し

電冷されたコンビニの舗中で少し涼んだ。

涼菓コーナーで5分ばかし悩選した末

棒貫型の涼菓をレジに提納する。

前刻の蓄髭した舗員から再び賃交し

いざとばかりに外に出れば、再落する運龍のような甚雨。

叩激するような、衝貫するような、裂烈するような雨。

しかし焦慌する絶因なし。先際に願購した綺傘があるのだ。

思外に鼠運というわけではなさそうだ。

 

店関の傘納に落視すると先今に望手した傘がない。

疑認かと再目するもやはり消傘している。

 

己の悔惜さに沈凹してしまう。

 

盗られるために買ったような傘だった。

 

干置中の濯潔物を思環していた。

 

 

 

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閑話休題 を入れる文章はキツい

 

オリジナルの二字熟語だけで文章を作れば

山月記(著:中島敦)」のような一見して格好の良い文学が出来上がるかと思った。

思いついたもの、大体既に日本語にある。

日本語はだいぶ洗練されてる。つくづく痒い所に手の届く言語だ。

 

■ポイント

・熟語が存在していたら考え直し。

・一見して意味が分かるか。

・読み方を一切考慮しない

 

■ちなみに山月記の冒頭

 

隴西の李徴は博学才穎、天宝の末年、

若くして名を虎榜に連ね、

ついで江南尉に補せられたが、

性、狷介、自ら恃むところ頗る厚く、

賤吏に甘んずるを潔しとしなかった。

 

読ませる気ないだろ。

 

 

■気に入った熟語(自由な読み方で)

暢靴…お気に入りの靴

揺肥…揺れるほど太っている様

賃取…金銭のやり取りの末に手に入れること

脱店…店から出ること

嘲晴…「おひさまも笑ってる」の意

賃交…金銭のやり取り

願購…かねてからの願いの末に賃取すること

鼠運…運がないこと

沈凹…激しく悲しむ様

思環…思いふけること

個人的2020年日本語ラップbest

過去

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個人的2019年日本語ラップbest

 

2020年

 

 10.MOUSOU PAGER

『BEYOND THE OLD SCIENCE』

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伝説のHIPHOPグループMicrophone pagerへの愛情が強すぎて結成。

本家pagerに寄せすぎて笑ってしまうくらいだけど本家公認らしい。

コンテンツ力凄い。録音環境かミックスなのかあえてなのか分からんけど音はあんまり良くないが。

 

9.Awich

『孔雀』 

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YENTOWN所属のシンガー/ラッパー。

プロデュース陣も充実。

ミックス凄くない?

ラップに聞き応えがある。

 

8.テークエム

『XXM』

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近年のトラップブームに対してのテークエムからの回答。

これ以上他にもう乗せ方なくない?って思うくらい、個人的にトラップアルバムでベスト。

あと歌詞がめちゃくちゃ洗練されてる。

 

7.JNKMN

『JNKMN NOW』

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YENTOWNの仕掛人

生活の切り取り方がグロテスク。

今年一番クールだったかも。

 

6.Sound's deli

『RUMBLE』

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Boombapもトラップも何でもやりたい盛り若手マイクリレー。

ワンループのビートが無骨でカッコいい。

インストテープも聞いてみたい。

 

 

5.moment joon

『Passport & Garcon』

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韓国出身・大阪在住ラッパー。

在日韓国人から見た日本だったり、移民性だったり、メッセージが鋭い。

アルバムとしての完成度も高い。

久しぶりに心を揺さぶられる日本語ラップ

 

4.LSBOYZ

『LSBOYZ』

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アングラ文化の懐かしいHIPHOPかと思いきや上手にトラップも乗りこなすし、メンバーのキャラが立ってて聞いてて飽きない。

時折アブストラクトな芸術的な歌詞が良い。

Dinary delta forceが出てきたときと同じ感覚かもしれない。

 

 

3.PUNPEE

『The Sofakingdom』

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音から歌詞からメロディまで何もかも良かった。

Doomsdayが一番良かった。punpeeMF doomが好きすぎるんだろうな。

 まずタイトルが最高。

 

2.NyCuilCaps

『SWIRL』

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NF zessho全曲プロデュースだけあって、トラックの上ネタが異常に良い。

基本を通ってないような、3人とも独特な言葉の置き方がラップがめちゃくちゃ癖になる。

年始にリリースされた分、累計の再生回数は一番多い。

Deepは名曲。

 

1.環Roy

『Anyways』

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アンビエント且つ壮大なトピックスだった前作と比べて、より輪郭的なトラックと、より内向的な歌詞。

トピックスが身の回りのことばかりだったり、全曲セルフプロデュースだったり、やりたい事が如実に伝わってくる。

日本語の鳴らし方がめちゃくちゃに上手い。

やたらとシングルを切っていたのはこのアルバムを一枚まるまる聞かせるための伏線だった。

 

以上です。

 

 

 

正解のワイン

肉とワインが「合う」のは舌の上でなく
脳の中での話かもしれない。

 

幼いころから「肉料理には泥水が合うよね」 なんて情報を刷り込まれたら
28歳の今、ステーキと泥水を食卓に並べてた可能性もある。

 

寿司と日本酒、パンとミルクは分かる。
原材料に共通項がある場合は仕方なく、合う。

根本が一緒なんだからそれは合うとか以前の問題でもあるが。


数年前から「レモンサワーとから揚げは合う」 的なCMをよく見る。
それまではなんとなくで机の上に並んでた両者が、
CMを見た後はどことなく仲睦まじく見える。
イメージ戦略の成功とも言えるが、
意識して嗜むと不思議と確かに合う気もしてくる。

 

そもそも「合う」という感覚が人一倍希薄な自分にとってはそれらは全て疑念の対象になる。


彼奴らは情報を食べているのではないのか。

 

ビールは本当に美味しいのか、コーヒーは本当に美味しいのか

時々見失いそうになる。

 

そんなことを言っていると大抵は目の前でスマホを操作され
挙句の果てに「肉のたんぱく質を赤ワインの酵素が」なんて
ネット経由の講釈が降りかかる。

 

そういうことじゃないんだ。

 

不思議だと言えばフィギュアスケートもそう。

演技の「美しさ」を数字化して評価するなんて無謀だ。

例えば一切の回転をしない演技もそれはそれで美しいはず。
直立不動でリンクを高速で周回すると得点はどうなるのか、 非常に気になる。

例えば綺麗に華やかに転倒した場合は加点するべきじゃないか?
例えば4回転ではなく一気に30回転くらいしたらもうそれは下品 じゃないか?


観客も観客で
大勢でなく、一人しか観客席にいなかったらどうなるだろう。
演技の端々で拍手するタイミングは自分ひとりで掴めるか?

 

要するにこれも
「○○をすると美しい」という「正解」がある。
競技である手前、致し方ないが
その「正解」というものは
大勢の中にある固定観念や歴史が作り上げてきた価値観だ。


2020年、ラッパーとしてステージに立つ機会はかなり減ったが
ありがたいことに自宅で机に向かう仕事はほんの少し増えた。

 

時折いわゆる「自信作」が完成するときもある。
それが誕生した際には自分が天才になったような錯覚に陥り
本当に初孫の様に作品を可愛がる。

 

がしかし、 先方に提出した際にそこまでの評価を得られないことも往々にして ある。

 

まあ仕方ない。
それもアレだ。合う、合わないの話だ。
誰も悪くない。
自分の持つ「正解」が相手の「正解」ではなかっただけ。

 

それでもなお「自信作」だと言い切る気概こそが
元来「こだわり」と呼ばれてきたものなのだろう。

 

とはいえ同志との「正解」のすり合わせは大事。
そこを怠っていいという話ではない。

正解じゃない=不正解 というわけでもないしね。

 

先日人生における正解が一番近い人間と結婚した。

誰かにとっては泥水のような自分が
ワインの様にいれる場所に落ち着いた、と思いたい。

仲睦まじく生きるのだ。

 

文脈フェチズムにピカソとAVとHIPHOP

文脈を意識することでコンテンツはもっと楽しめる。

 


要するに知識はあればあるだけ「楽しい」を裏付けることができる。

 


「文脈を意識する」となると仰々しく聞こえるが

大半の人は自然とこれを行っている。

 


例えばピカソの絵なんて「よくわからん」で済ませることも可能だが

あれは「平面を立体に見せることへの挑戦」というピカソの意図を知れば

不思議と急に面白く感じれるかも。

 


それどころかほんの少しキュビズムへの理解度も増すし

絵画にも含蓄のある博識な人間だと知らしめてることもできるし

合コンで披露すれば人より少しだけ多くヘラヘラできるかもしれない。

 


文脈とはそういうものだ。

 


アダルトビデオを拝聴するとき

ソファでのインタビューから見る理由と酷似している。

どんなバックボーンであれど、

それは作品を必ず修飾してくれる。

 

 

 

ところで先日、PUNPEEのEPからs.l.a.c.kとの共作

"Wonder wall"のビデオが公開された。

 


曲の感想はさておき、あれこそ文脈を知っているとより楽しめる。

 


サビでPUNPEE

「仮に2で割って最高、そうならなくても」

と歌っているのだが

 


あれはs.l.a.c.kのHot cakeという楽曲のライン

「俺の良いとこと君の良いとこを足して2で割りゃ最高最高だと思うよ」への

PUNPEEからのアンサーだと解釈できる。

 


勿論曲名はOASISのWonder Wallから丸ごと拝借。

 


ギャラガー兄弟の関係性を知っていればもっと楽しめるし、

そもそもPUNPEEとs.l.a.c.kが兄弟であるということが今作において大元の文脈である。

 


HIPHOPとはつくづく文脈性の高い音楽。

なにせ私情を歌うのが美徳とされる文化圏なので

パーソナリティの切り売りは必須。

キャラクターまるごと作品化していく商魂こそがHIPHOPと言って過言じゃない。

そのうえサンプリングと言う名の引用文化。

引用元を知っているとアガる。ただそれだけの話。

 


KRS-ONEHIPHOPの5番目の要素はknowledge(知識)だと提唱していたが

それは上記のようなことも含まれてる、のか?

 


しかし

作品の独立性を好む人がいるのも事実。

HIPHOP、ひいては音楽に限らずとも。

 


例えば

「あ~この映画良いよね~あのシーンは○○のパロディでオマージュでリスペクトを」

と言い出されるのは確かにうざい。気持ちも分かる。

だが個人的にはそういう情報は是非に知りたいタイプだし、

というか人にこういうことを言っちゃうのは自分だ。

 


みんながみんな文脈を知りたいわけじゃない、とは思うけども

絶っ対知ってた方が面白いやろ!って気持ちは揺るがない。

 

 

 

何故そんな話をしているのかというと

先日「何フェチ?」という質問に突如相対し

思考を数秒巡らせた結果

「『あんな子が今こんなことになってる!!』っていう状況が好きっすね」と

答えて職場の人の顔を曇らせたことが起因している。

 


いわゆるギャップ萌えではない。

これは脈絡の萌えなんだ。

それを文脈フェチと名付けることにした。

 


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西通りで信号待ちをしていた夜

突如よそ見をしていた女子にぶつかられる。

女の子は尻もちをついて

「ひい!すみません!」と発して、

すぐさま友人と思わしき誰かと去っていった。

 


当たり負けのしない、立派な体になってしまった。

いつのまにか誰かを傷つけるほど太ってしまった。

 


女の子は「今日の主役」というタスキを身に着けていた。

 


主役を、太った男が、倒してしまった。

 


文脈が西通りで交差していた。

 

 

 

『君』の付けてた香水が『ボッテガ』じゃなくて良かった

 

メロディがかなり余ってしまう。

 

例の曲がこんなに流行ってるなんて知らず

認識したのはつい最近のこと。
上司が「いい曲なんだよ」って煙を吐きながら話してた。

 

職場を出て、早速サブスクで探して再生してみる。

 

特筆すべきはやはりサビ。
なんて独特の譜割りなんだと驚いた。
ドールチェアーンドガッバーナって
つーるとかーめがのリズム。

 

絶対そんなの思いついたって避けるだろってのを
堂々とやり切って
いまや若者世代で大ヒット。
こんな時代にインディーズから発掘されるなんて
本人からするとこんなに嬉しいことはないだろうなあと思った。

流行している層も何となく想像ついて
同時にそれは自分の学生時代のトラウマスイッチにもなる。

 

一昔前、AK-69を着メロに設定していた層でしょ、多分。
野球部を卒業しても私服でアンダーアーマー着ちゃうタイプで
ベルトのバックルを周囲にひけらかすファッション。
とにかくラルフのロゴをでかくして
先輩から中古のクラウンを譲り受ける文化圏に所属してる者たち。


そしてそれは中高で自分が敵とみなしていた層。


冒頭の歌詞で「君からのLINE」的なものがあった時点で
「ヤンキーが聞いてる感じの曲だうわあああ」

って卒倒しそうになった。


トラウマは案外いつもすぐそばにある。

 

前提としてこの曲は好きでも嫌いでもない。
でも自分のspotifyの再生履歴に「香水」のジャケが表示されてると
なんとなく収まりの悪さを感じてしまうのは
そういうコンプレックスが起因しているのか。

 

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Public Enemyが新曲を出した。

PEと言えば93年にリリースした
Fight the powerが世界的ヒット。

HIPHOP好きで知らない人はいない不朽の名作。

要約すると「黒人差別に立ち向かえ」というテーマの曲である。


それから30年弱たった2020年。
久々リリースされた新曲は

『State Of The Union(STFU)』
トランプ大統領に怒りを提示する歌詞。
内容は「黒人差別」について。

 

30年経つのに議題が全く変わってない。
ひいては、世界の状況はこんなにも変わってないのか。

 

むしろ最近の暴動然り
内包的だった差別問題が表面に浮上してきたアメリカ。

 

正直黒人差別なんてもうなくなってるとすら思っていた。
オバマ大統領が誕生したときにそれは「すでに終わった話」とすら感じていた。

どうやらそうじゃないらしい。

 

そんな中カニエウエストが大統領選に立候補だとかいうニュース。
言及するだけじゃなく、これを機にみんなカニエを聞いてみて欲しい。

 

そういう話じゃないだろって言われそうだけど
単純にファンであるっていう理由と
そういう世界線を見たいがために、応援したい。

 

願わくば大統領目線のポリティカルなアルバムを出してほしい。
立ち位置に説得力がありすぎて他と勝負にならないアルバムを。

 

無理か。

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この数か月の自粛期間中で
数多のクリエイターが揃ってネクストレベルへスキルを高めたのではないか。

 

音楽も動画も物書きも、ありとあらゆるコンテンツにおいて。

 

あれだけ時間があった。
例に違わず、自分も何曲も書いた。

 

全員そろって「一回休み」が発令されたスゴロクのようなもので
これを有効的に使わない手はない。

 

そろそろ、そんなレベルアップした作品が一気に人里に降りてくるころ。

純粋に、それらを早くキャッチしたくて溜まらない。


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punpeeとかブルハとか小林大吾とか

punpeeの新譜が絶対良いの分かりきってて

聞いちゃうと色々考えたり、多くの時間を奪われることを逆に憂鬱に感じて

いまだに全曲聴けてない。

 


KREVAの登場はもう、なんか、キッズになってしまった。

気がついたら動画を何度も繰り返し再生してて

謎に泣きそうになってる自分を俯瞰で見てしまって、携帯を置いた。

 


あのMVがいつ撮影されてたか分かんないけど

結婚の発表すら自分のMVの伏線か。

要するに人生まるまる映画的な展開を演出してるなって思った。

どこまでも脚本じみてて、最高にサブカルチャーだと思った。

 


とき同じくして

THA BLUE HERBも新譜発売。

またも頭を使ってしまう音楽。

流行りの、気軽に聴けるHIPHOPも良いけど

いちいち再生を止めて考え込んでしまうくらいのHIPHOPが結局一番好き。

非常に映像的な、カメラワークまで想像できる情景描写の卓越さ。

言わずもがな、リスナーにもスタミナが必要な音楽。

全身で受け止めるには体調を整えないといけない。

 


そして小林大吾もサブスク解禁。

ラッパーのボーストは一切なく、創作話のポエトリー。

ブルハとはまた違う文字数の暴力。

粋なジョークのように軽快な文章もあるのだけど、単純に少しブルーな今日に聴く必要性が見当たらなかった。

出来ることならサブスク解禁しないで、自分だけが知ってる籠城スペースであって欲しかった。

 


7月になった途端の今日

冗談みたいに自分の好きな人ばかりがリリース。

でも聴くと感情が1日死んでしまうので

未だにどれも聞いていない。

好きすぎて辛い。

 


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茶店でぼんやりと時間を潰したあと

店を出てチャリに跨ろうとするも、

そのチャリがない。

 


焦って周りを探して、やはり無い。

 


思えば

チャリの修理が終わるのを待つために

無理やり入った喫茶店だ。

 


チャリはチャリ屋に預けてある。

 

 

 

7月は少し気をしっかり持とうと思った。

 

ラップの作詞法と情緒と俳句の親和

歌詞を書くなんていう恥ずかしい行為について
恥ずかしげもなく触れるとすると

センスのある共感性とは
「究極のあるあるネタ」であると思っている。

それは
「ラインに既読がつかなくて寂しい」的なものではなく
もう一つ日常に沈んだ深層部分のあるあるであり
誰もがまだ言語化できていないあるあるにこそ表現の妙を感じる。


例えば「」がテーマの場合

 

「アイスコーヒーを飲む」
これは普遍的ではあるが至極当たり前のあるある。

 

「結露したアイスコーヒー」
これはすでに「飲む」という意味を含有させたうえで
もうひとつ要素を付け加えたもの。

 

「誰かがコーヒーを置いていた跡」
コーヒーのグラスが置いてあったであろう不完全な円形の水跡。

個人的にはこの3つ目のセンスを求めている。

 

更に「夏」=「誰かがコーヒーを置いていた跡」と
直結していればいるほど、そこに文学を感じる。
文脈に余白が残っているものが、ぐっとくる。


NODのwhite outという曲中で
『僕ら昨日のことを今日と呼ぶその言語感覚を共有している』
と歌っているのだけれども、
これは「日付を越えて明け方まで遊んだ」あるあるだと思って書いたが
こういった一文は前後の文脈とかけ離れているほど美しく、
もっと言えば単体で見てもらいたいという欲望がある。


なかなかこういった文章の好みを人に話しても
上手く伝わらずヤキモキしていた。
なんというジャンルなのかこれは。

がしかし、最近近しいものと巡り合った。

 

 


俳句。
更に言えば自由律俳句だ。


一般的に良い句とされるのは
どれもこれも「目の付け所の良いあるある」なのだ。

まさに痒い所に手が届く感覚とはこのことを言うのかと思った。


ラップという歌唱法において
発音と拍との兼ね合いを考えたとき
母音レベルで文を精査する作業が必ず生まれる(他の人はどうか知らない)

少し難しい話をすると、

例えばひらがな1字「ま」を

【子音M(0.5字)】+【母音A(0.5字)】=【ま(1字)】と捉える。

 

作詞完了後、いざ発音した際

「この小節には16字が望ましい、が0.5字多い」

と思えば

【母音A(0.5字)】を削り【子音M】だけの発音を残す。
一見数学的な考えでもあるが、
これを感覚的に、且つ丁寧に精査するのだ。


この作業が俳句を詠むことと非常に似てる。

これに気づいてから俳句を見る目が大きく変わった。

特に自由律俳句にはかなり感銘を受けた。
(5・7・5ではなく自由な律でOK)


そこで
放送作家せきしろ氏とピース又吉氏の自由律俳句に出会ったので
以下素晴らしい彼らの句

 

「カキフライがないなら来なかった」


本の標題句。
店頭の看板とか食べログで事前に見て
食べたいメニューがあったから店に入ったんだろう。
切なくて良い。


「思ったよりお礼を言われなかった」

 

「カツ丼喰える程度の憂鬱」

 

「もう引き返せないということもない」

 

「結露した窓の中にいる」

 

「廃校にも咲いていた」

 

「断ったのに聞き返された」

 

「ブランコに濡らされた手を拭く」


全部ちょっと切ない。


あとこの方のnoteも面白かった。
https://note.com/hsb/n/ndd95610f4c31

以上です。